2019年 熊野寮入寮パンフレット
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てんと生活のすすめ

自分はB棟一階に4年間住んでいるものです. 一階といえば, やっぱり気になるのがG. 普通の家でもたまにお見かけしますが, この寮ほどの共存関係では無いでしょう. とはいえ入寮前にはだれもそんなことは知らない. 自分だけは事故を起こさないと思い込む平均的運転者の如く, 私も自分の周りだけはGも寄り付かないのではないかという根拠のない自信と共に入寮しました. まあ滋賀から一時間半かけて通うか, Gとたまに挨拶する煩わしさを天秤にかけたなら, 当然の選択でした. なんとかなるやろ, と. この寮を紹介してくれた先輩方は, 「そんなん見たことないで〜ハハン」や「部屋をきれいにしてれば大丈夫. 食べ物は外で食べること!」などと綺麗事を並べ立て, 若干19歳の後輩を幻想で満たしたため私は特に疑いもせず入寮初日を迎えました.

自分だけかもしれませんが一回でもGを見たらその部屋では寝れません. これはこちら側の人間にとっては当然のことです. コモンセンスです. なので予防策を予算内で整えました. できうる最大の準備を!入寮初日に導入したのはホウ酸団子. 極悪非道な方法とはいえ, 快適な生活のためには仕方ない. さらに甘い香りでベタベタトラップに誘い込む小屋も多数建設しました. 最初から, 彼らを殲滅する作戦をとったのです. この部屋から出て行け!

作戦が功を奏したのか, 入寮から一週間が経っても黒い影は見えません. やはり先輩の意見は正しかったと思いました. いつものように二段ベッドの下段に入り, いい夢を見ていると足元に違和感を感じました. 起きて電気をつけるとまさに私の膝下に彼が仁王立ちしているではありませんか. 戦慄した私はベッドから文字通り飛び降り, 同部屋で寝ていた後輩を叩き起こし, 助けを求めました. 彼は慣れた様子でスリッパをとり「どこですか」と答えてくれました. 寝ぼけた頼りない様子ではあるものの, 戦力は戦力なので味方を得た私は奴が隠れている場所を的確に伝えました. 後輩は電気をつけ, その場所を探し始めました. その瞬間, 奴は物凄いスピードで戸棚の奥深く消え, 捕捉不可能となってしまいました. 「戸棚の裏か? !」その場所を凝視する私を尻目に後輩はあろうことかベッドに戻っていきました. 「危機は去ったということで. おやすみなさい」「え? 」

ありえない. この瞬間に私は悟りました. この寮に住んでいる奴らはおかしい. ネジがはずれているとはこのことだと思いました.

そんな部屋では寝れません. 談話室のソファで夜を超すことにした私は, この事件について分析を深めていました. 「もしやホイホイが隣の部屋からもホイホイしたのかもしれない. 」「その上でこれからはどうすればいいんだ. 滋賀に帰ろうか」そうして絶望しているうちに, その日は眠ることができました.

次の日, 本格的に寮生諸君にこの問題についてヒアリングを行ってみると, おかしいのは私でした. 「そんなものは全ての家屋に存在する. あきらめて共生するんだな」「君は昨日ベッドで襲われたかもしれないけれど, そんな話は聞いたことがない. アンラッキーなんじゃない? 」「私は本当に一回もみたことがないよ. 部屋掃除すれば? ? 」「だからといって君, 5万払って下宿すんの? 」みんな, どこかで折り合いをつけて生きていました. まさに二重思考の使い手になるしか現代を生きる道はないのか.

......

あきらめないで!

そこで私が購入したのがこの一人用テント!ア*ゾンで3,000円もしない安物だが, それで十分. 部屋の中で使うなら4年365日の使用に耐えうるこの一品!

私は二段ベッドの下段で寝ていたため, テントを張るためのロープも外枠に括りつつけることができ, バシッとテントを布団の上に設営できました. そしてその中には枕と寝袋!これで完璧なんです. 自分の体を完全に包み込まれた私は, 自分だけの空間を手にしたのです!!

窮屈なんじゃないの? と思っているあなた!そんなことはあります. だがそれがなんだ!四年間このテントで生活した私は, 寝返りゼロで寝る能力を手に入れました. まさに直立不動の姿勢で寝れるわたし. これがソリューション!レッツ熊野寮!

(文:マリファナは中毒性がない)